医師国家試験問題

生涯研修医を目指して医師国家試験問題に学ぼう

脳腫瘍・下垂体腫瘍による先端肥大症

先端肥大症

(1)成長ホルモン産生下垂体腫瘍

(2)症状;手足の容積増大・顔貌の変化(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出、巨大舌

(3)合併症

    ① 高血圧・虚血性心疾患

    ② 糖尿病

    ③ 睡眠時無呼吸症候群

  ④ 手根管症候群

    ⑤ 悪性腫瘍(特に大腸癌

    ⑥ プロラクチンも同時に分泌されることがある ⇒ 月経不順・乳汁漏出

 

(4)検査所見
成長ホルモン(GH)分泌の過剰
  血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない
インスリン様成長因子-IGF-Iの高値
 IGF-1は成長ホルモンの刺激により、主に肝臓で産生され成長を促進する

   ③P血症をきたすことが国試で時に問われる

 

(5)治療の原則は手術療法 

⇒ 経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(Hardy手術)

 



109B-56

 

脳腫瘍・基本事項

脳腫瘍  

小児では「好発する腫瘍」が、成人では「髄膜腫と下垂体腫瘍(先端肥大症)」がヤマ

 

基本事項

(1)下垂体腫瘍 (先端肥大症が代表)

  ①視野欠損がみられる(両耳側半盲)

  ②分類;非機能性(40 %)・プロラクチン(PRL)産生(30%)・成長ホルモン産生(20%)

  ③治療;PRL産生はドパミン作動薬(ブロモクリプチン)、その他は経蝶形骨骨洞腫瘍摘出

    

(2)髄膜腫

  ①全脳腫瘍中最多で良性 ⇒ 全摘すれば予後良好

  ②けいれんで発症する(共同偏視

  ③外頚動脈の血管造影で sun burst appearance

 

(3)聴神経腫瘍

    症状は ⇒ 聴力障害・めまい・顔面神経麻痺

 

(4)転移性脳腫瘍は造影CTでリング状増強を示すが、

     ⇒ 鑑別すべきは「膠芽腫」と「脳膿瘍」

 

(5)小児の脳腫瘍

① 白血病に次いで多い悪性疾患だが、死亡率は1位

② 小児に多い脳腫瘍 ⇒(小児は頭を上げてずっと星を見る)

 1.星細胞腫 ⇒ 脳幹・小脳半球 ⇒ 脳幹部は治療困難

 2.胚細胞腫(特に松果体腫瘍) ⇒ 化学療法・放射線療法の効果が高い

 3.髄芽腫 ⇒ 小脳中部・小児脳腫瘍の代表;髄腔内播種

 4.頭蓋咽頭腫 ⇒ トルコ鞍 ⇒ 良性だが下垂体ホルモン分泌に影響

 5.上衣腫 ⇒ 第4脳室が好発、比較的良性

 

③テント下に多いということは、、 

  ⇒ 中脳水道・第4脳室圧迫による水頭症・頭蓋内圧亢進(眼底確認!)

 

 ④早朝起床時に頭痛と(嘔気のない)嘔吐 

乳癌・今年(118回)の問題

118 A40 
65歳女性。10年前から乳房のしこり。最近痛みが出現した。左乳房に皮膚の陥没、3cmの腫瘤を触知。MGでは周囲にスピキュラを伴う高濃度腫瘤陰影と多型性の微小石灰化を認める。⇒典型的な乳癌の所見です。

118A53 



(d)⇒ その後で生検

118E4  リスクファクターと合併症


c. 閉経後肥満---- 乳癌

(解説)

閉経後は卵巣で作られるエストロゲンが大幅に減少し、その代わり、わずかではあるが体内の脂肪組織でエストロゲンが作られるようになる。 そのため、BMIが25を超える肥満の女性の場合、血液中の女性ホルモンが増加することで、乳がんの発症リスクが高まってしまう


118E16  乳癌を疑う所見で間違いは


a.  乳汁分泌
b. 乳頭陥没
c. えくぼ徴候
d. 橙皮様変化
e. 大胸筋に固着した腫瘤

解答(a)⇒ 血性乳汁である

乳癌・過去問(117回)

117A8 我が国の対策がん検診で行われる乳癌検診方法は ⇒ マンモグラフィ

 

 対策型検診とは集団全体の死亡率減少を目的として実施するものを指し、公共的な予防対策として行われます。このため、有効性が確立したがん検診を選択し、利益は不利益を上回ることが基本条件となります。わが国では、対策型検診として市区町村が行う住民検診が該当します。放射線被爆の高いCTや費用の高いMRIが選択されるはずもなく、「視触診単独」や「超音波検査(単独法・マンモグラフィ併用法)」は死亡率減少効果を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診として実施することは勧められていません。


117D32 
30歳の女性。6か月前に右乳房外側上方にしこりを自覚し、2週間前に大きくなっていることに気付き、右の腋窩にもしこりを自覚。最近めまいと頭痛を自覚している。乳がんの家族歴はない。乳房超音波検査で乳癌が疑われ、経皮的針生検で浸潤性乳管癌と診断された。治療方針決定のために今後行う検査はどれか。3つ選べ。

 頭部MRI

 乳房造影MRI

 腋窩リンパ管造影

 BRCA遺伝子検査

 頸部・胸腹部造影CT

 

 

解答: a,d,e

乳癌は乳管や小葉の中にとどまっている「非浸潤癌」と乳管や小葉の外にまで広がっている「浸潤がん」に分けられますが、浸潤癌では、リンパ節、骨、肺、肝臓、脳へ遠隔転移する可能性があり、この症例も転移が疑われるため(a,e)は必要と考えます。

若年発症乳癌の場合、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HOBC)の鑑別のためBRCA遺伝子検査は必須と考えます(陽性なら分子標的薬使用)、(b)と(c)は手術範囲決定のために必要と考えます。ちょっと難しい。正解率30%もしかたない、

乳癌・過去問(116回まで)

107I30 乳癌の治療法

   ⇒乳癌の約6割はエストロゲン受容体陽性で該当する場合はホルモン療法

108A59 MGで乳癌を疑う症例に行うべき検査(腫瘤触知) 

    ⇒ 経皮的針生検・乳房超音波

109E40 MGで乳癌を疑う症例の次に行う検査(腫瘤触知せず)

    ⇒エコーで部位を特定し生検

110C10 乳癌を疑う所見 ⇒ えくぼ徴候は乳癌を疑う

110E27 22歳女性。母と姉が乳癌で不安 ⇒ 遺伝子カウンセリング

111-I49 61歳女性。MGとエコーで乳癌疑い、次に行うのは? ⇒ 経皮的針検査

112A71 64歳の女性の乳腺腫瘤。境界明瞭で硬く圧痛を認めない。乳頭からの分泌物なし。MGで腫瘤周囲にspiculaあり。次の検査は? ⇒ エコーと針生検

113A54 65歳女性。MGで異常指摘。乳房腫瘤は円形、弾性硬、可動性良好で圧痛なし。乳頭分泌を認めない。エコーで辺縁不整な低エコー腫瘤像 ⇒ 次は穿刺細胞診

114B9 乳癌を示唆する所見は? ⇒ 大胸筋前面での可動性低下(大胸筋浸潤を疑う)

114D65 MGの所見より乳癌を疑う、次の検査は? ⇒ 超音波ガイド下針生検

114E35 (英文問題)42歳女性の乳腺腫瘍。直径は2.5㎝、硬く可動性あり。腋窩リンパ節

は触れず。MGspicula+)、生検で乳癌の確定診断。画像診断にて遠隔転移を

認めない。治療方針は? ⇒ Breast surgery

115A22 77歳女性の乳房腫瘍。MGspiculaを伴う腫瘤、エコーで辺縁不整な腫瘤像。     次に行うのは? ⇒ 経皮的針生検(正解率99%のサービス問題)

112A-71


116D36 62歳の女性。右乳房の違和感を主訴に来院した。触診で径約4cmの腫瘤を触知する。腫瘤は表面不整で弾性硬、可動性は不良で圧痛を認めない。乳頭からの分泌物を認めない。マンモグラフィーを示す。最も考えられるのはどれか ⇒ 典型的な乳癌のMG(微細石灰化)

116D-36

乳癌・基本事項

乳癌・基本事項

(1)視診  
 
乳頭(陥没・血性分泌・びらん) 
 ②皮膚(橙皮・えくぼ)

 
(2)触診 ; 硬く・不整で痛みのない腫瘤(平滑だからといって否定はできないが)

 

(3)画像診断  ここが最も出題される!
   ①マンモグラフィーMG):spicula、微細石灰化像

  エコー:小腫瘤の発見に適している(比較的若年者の症例)

 

  MGとエコー検査の比較

   エコーは動画で検査する人の経験が影響するが、熟練者なら3㎜でも見つけられる。MGは画像にしてじっくり診断できるが、1cm以下は見落としがありうる。一般的に若い人はエコーで、中年以降はMGが推奨される(もちろん併用がベスト)

 

(4)確定診断 ; 穿刺吸引細胞診または生検  治療法も決定できる

 

(5)治療 ;  手術・ホルモン療法・分子標的薬

  20% HER2が陽性、ハーセプチン(トラスツズマブ)は抗HER2抗体(転移性肺癌に適応)。ホルモン受容体陽性70%で、両方が陰性(トリプルネガティブ)10%で、これをどう治療するかが今後の課題

高K血症・今年(118回)の問題

118A36
 64歳女性の息苦しさ。15年前から糖尿病・高血圧あるも未治療。2ヶ月まえに発熱で近医を受診し腎機能障害を指摘された。3週間前から食欲なく、一昨日から息苦しさ出現した。166cm, 75㎏(2ヶ月前は70㎏), BP 190/110  , SpO2 90、両下肺野にcoarse crackle, 高度な下肢浮腫尿蛋白3+尿糖2+、随時尿蛋白 188㎎/dL, Cr 87㎎/dL, Hb 9.0, TP5.3、Alb.2.8、BUN 56, Cr 3.9 BS 263, HbA1c 8.6, Na 140,  K 6.7, Cl 106  胸部X線で心拡大と肺うっ血を認め、心電図でテント状Tを認める。
この患者にまず投与すべき薬剤は?

a. SGLT2阻害剤
b. アルブミン製剤
c. グルコン酸カルシウム
d. エリスロポエチン製剤
e. アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)

解説
(1)かなり進行した未治療の糖尿病・高血圧
(2)Cr3.9、Alb.2.8、一日の尿蛋白量は 188/87 = 2.1g/gCr、
   ネフローゼ症候群の診断基準は満たさないが進行した糖尿病性腎症
(3)下肢浮腫・体重増加・肺うっ血 ⇒ 体液貯留・心不全
(4)K6.7 テント状T ⇒ 高K血症、致死性不整脈の発生の危険性大

a. SGLT2阻害剤 
 尿に糖を排泄するという画期的な糖尿病治療薬、最近「CKD」と「心不全」に適応が追加された。この患者にも使用できるかもしれないが「まず」ではない

b. アルブミン製剤
 通常、低アルブミン血症にアルブミン製剤は使用しないし、浸透圧を高めると心不全を増悪させる。

c. グルコン酸カルシウム
 まず高K血症を直ちに補正しないと危険。正しい処置

d. エリスロポエチン製剤
 腎性貧血はあると思われるので、後で使用するかもしれないが、、

e. アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
 腎保護作用があると言われ糖尿病に合併した高血圧に処方されるが、「まず」ではない

解答(c)